MS型開発
2007年12月のI自動車メーカーでの中国実用化テストが無事終了し、その後、I自動車メーカーから要望が出された。
I自動車メーカーの主力自動車である中型セダン(長さ4700mm)を53’コンテナで6台、40’コンテナで4台積載し輸送したいというものであった。
現在のマザーラックはM型とS型があり、M型は中型セダン(長さ5100mm)が
40’コンテナで3台積載可能。S型は小型セダン(長さ4500mm)が40’コンテナで4台積載可能となっており、現在のマザーラックでは今回の要望に答えることができない。
そこでM型とS型の中間タイプのマザーラックMS型の開発がこの時スタートした。
まずは、中型セダン(長さ4700mm)をどの様にして53’コンテナで6台、40’コンテナで4台を積載するか?
下段の自動車と上段の自動車とのラップ(重なり長さ)を長くしなければならずギリギリの設計が必要となった。
又、53’コンテナと40’コンテナでは高さが約400mm違う。これをどの様に兼用できる構造にするか?
フロントピラー(前柱)とリヤフレーム(後柱)を伸縮構造とし、強度確保はもちろん、折畳み収納がどの様な状態でも可能にしなければいけない。
かなり難しい設計となったが、これら問題を1つ1つ解決し、2008年3月MS型試作1号機が完成した。
完成後、すぐに中国大連にて公開自動車積載テストを実施することとなり、大牟田を含むロッコースタッフ6名で対応することとなった。
テストでは40’コンテナと中型セダン(長さ4700mm)が準備された。
テスト前日、自動車の搬入出練習を繰返し行い、問題がないことを確認した。
その夜、ロッコースタッフ6名の靴を買い揃える為、街に出た。
6足分の同じ靴がなかなか見つからず(低価格で求めたせいもあり)大連の街を3時間近くさ迷うこととなった。
教訓その1、日本で準備できるものは前もって日本で準備すべし!
ともあれ、明日の本番の準備は全て整った。
テスト前日10時30分に招待者、関係者を含め数十名が集まる中、公開自動車積載テストが始まった。
1台目問題なく積載しコンテナへ搬入完了。
2台目を積載し、コンテナへ搬入しようとした所、途中で搬入できなくなった。
おかしい?
何かに引っ掛っている感じである。
始めての現象だ、ロッコースタッフに緊張が走る。
とりあえず確認する為、2台目自動車をコンテナから引き出した。
コンテナ内を確認した。驚いた。
上段ラックのベースフレームがへの字に変形していた。
私の頭の中は真白!顔は真青!ついでに髪も真白!(元からか)、ロッコースタッフも立ち尽す。このままではテスト続行は不可能である。ここで大牟田は冷静に決断し指示した。
すぐにガスバーナーを準備させコンテナ内で変形箇所をあぶり、変形を修正する応急処置が行われた。
ベースフレームの変形は修正され、テストは再開された。
2台目の積載、コンテナへの搬入が無事完了することができ、中型セダンが積載できることが確認できテストは終了した。
その後、ベースフレーム変形の原因求明の為、再現テストが実施された。
同じ様に自動車を搬入しても変形が起こらない。再現できない。
大牟田から「試作機を粉々にしてもかまわない、再現させろ」との言葉が飛んだ!試作機を壁にぶつけ変形を再現させ原因を求明した。
その状況を見ていた中国製造メーカは、「そこまでするか!」MS型は強度アップを含め、改良を加え試作2号機が5月に完成した。
残念ながらI自動車メーカーへの採用は見送られた。
しかしその直後、中国蘇州にある、物流機械メーカーのA社から、マザーラックの製造、販売をやらせてほしいとの要望が届いた。
このことがマザーラックの上海展示会への出展へと展開していくのであった。
次回へとつづく・・・
設計部長 花城〔文〕